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ARTORO 『稲刈り』

ARTOROでの活動は毎回あたり前のことを気づかせてもらえる。

普段目にしていることも自分の身体を通すと疑問ばかりで新鮮に見えてくる。

ARTOROの活動自体、

「自分たちでできることは自分たちで」

「身体で考える」

「今を豊かに生きる知恵を過去から学ぶ」

・・・といった姿勢なので、

毎回貴重な経験をさせてもらっている。



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日曜日におこなった稲刈の時もそう。

「稲は生きている」

「1本1本の個体の成長に差がある」

「稲穂は常に鳥に狙われている」

「たった1本の苗がこんなに大きくなる」等々、

当たり前のことも、

普段精米された白い米しか目にせず、

コンバインでガーっと収穫される様だけを見ている自分たちは忘れてしまっている。

わかっている気になっているだけなんだな。




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参加者が来る前に今日はどう進めようかと田んぼを眺めてみると、

違種はもちろんのこと、同種でも成長に差があることに気づかされる。

ARTOROでは種もみから苗を育てるのは各自にやってもらっているので、

特に成長の差が激しい。

果物でも野菜でも同時に種を植えたから同時に実がなり、

まったく同じように成長するなんてありえない。

米も同じはず。

ぼくらは勝手に、

実が小さいからなのかまったく同じ成育になっていると勘違いしているだけじゃないのか?

通常一気に刈取ってしまうのは、

効率重視という点だけじゃないのか?

ARTOROの田んぼは、

今すぐ収穫すべきものもあればまだのものと不揃いも甚だしい。

(まぁ、ARTOROの姿そのものでもある気もするが・・・?)

これでは一気に鎌で刈取ってしまうことは難しいので、

今回は収穫できるものだけを収穫する穂刈で進めることにする。




収穫のタイミングは人間だけでなくスズメも狙っている。

人間側は休日に収穫を計画するが、スズメは関係ない。

食べれるものから食べるだけ。

なかなかのハンターである。

きっと弥生時代も収穫はスズメとの競争だっただろうし、

今よりもった競争が激しかったと思うと、

収穫できるものから収穫する穂刈りは結構理にかなっているのかもしれない。




稲を育てるというのは、

ジャンボタニシにスズメ、

仲良く共存させてくれない生きものは結構多いのである。

ぼくらの主食のお米って、育てるだけでも結構手間かかるのね。




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ARTOROが借りてる田んぼのすぐそばの木に鳥の巣発見。

前回の鳥の巣研究家の鈴木まもるさんの講座の直後なだけに、

ちょっとうれしい。

まもるさん効果なのか、

みんな鳥の巣の発見力がするどい。

話はそれるが、

僕は以前火の見櫓の調査をやっていたことがあり、

今でも火の見櫓の発見力はおそろしくするどいです。



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登呂博物館の入口近くの木にはカラスの巣も。

今までまったく見つけることなんかできなかったのに、

見え始めるといろいろ見えてくるものなのですね。




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登呂は水が豊富で地下水もバンバン湧いているので、

稲刈りのこの時期でも田んぼは水で満たされていてなんか不思議。

泥だらけになりながらの収穫、新感覚です。

穂刈りで使う道具は手で握れる程度の小さな石包丁!

きっとあんまり効果がわからなくて使わなくなるんじゃないかと思ったが、

意外にもものすごく使いやすく便利。

石包丁ナメタライカンです。

収穫した穂を手で持って、束ねていくことを考えると、

切る位置は穂の下から5cmぐらいのとこ。

穂刈りは地道な作業だけど、全く苦にならない。

収穫していく穂が自分の手の中で束になるのも

ありがたみが直に伝わってくる感じがするのも理由の一つ。

ある程度の量になったらその辺の雑草で縛ってまとめる。

この束ねた感じも小さくてかわいらしくて何とも言えない温かみがある。

穂刈りって素敵。

その昔、年貢でお米を納めるとき、

米粒ではなく、稲穂を束にしたものを納めていたそう。

穂刈りをしてみて、なんかその意味がわかる気がする。




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博物館からは復元された木鎌もお借りしたが、

残念ながら今回は活躍の場はなし。

今度改めて試してみたいと思う。

はじめて木鎌を見たが、

この当時からすでに鎌としての形が出来上がっているのもおもしろい。




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収穫した穂は各自持ち帰り、

乾燥させて脱穀してくるとこまで宿題。

わかっちゃいるけど、

お米ってとってすぐ食べれないのですね。

収穫したその場で口に入れて「うまーい!」ってできないんですね。

籾摺りまでやっても精米もしないといけないのですね。

何と手間のかかる食べ物!

ARTOROで、あたり前のこと気づかせてもらってます。




乾燥の目安として、

「米粒を剥いて噛んで頭がツーンとしたらOK」と教わったのですが、

このツーンがいまいちわかりません・・・。

これがわかるようになって、

気づきを増やすのがとりあえずの個人的な課題。

ARTORO、たぶんあたり前じゃないことも気づかせてもらえます。




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今回収穫できなかった分はまた改めて。

そして、稲藁部分はしっかり集めて、

いよいよ屋根材の材料の確保です。

次回11月の活動は、

神戸の茅葺職人の相良さんに再びお越しいただき、

茅葺実践編です!


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縄文と弥生ふたたび

私、ただいま縄文と弥生が同時進行中です。



明日20日(火)から25日(日)まで、

富士宮の大鹿窪遺跡(縄文草創期の遺跡)近くの三澤寺さんで、

『縄文DNA展』という美術展が開催されます。

「縄文」というひとつのテーマを

いろんな方々がいろんな切口で表現してます。

本日搬入に行ってきましたが、

いろんな解釈があっておもしろいです。

静かな雰囲気のお寺に不思議な世界が広がってます。

富士の山ビエンナーレも今週末まで開催されてますので、

ついでにこちらのほうまで足運んでみてください。


https://www.gurutto-fujinomiya.com/event/255/




で、今週末24日(土)と25日(日)は、

登呂遺跡にて、いよいよ小屋づくりいたします。

自分たちで田植えして稲育ててきましたが、

その稲藁で藁葺の小屋つくります。

今年度のアートロの大イベントなのです。

神戸の茅葺職人の相良さん再び登場なのです。

うまくできるといいなぁ。

そんなわけで、縄文と弥生が同時進行しております。



写真は『縄文DNA展』に向けて製作途中の「縄文神殿」。

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ARTORO 『土を耕す』

2018年度 ARTORO 第2回

『土を耕す。~ところで、土ってなんだ?』

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5月20日(日)、天気にも恵まれ無事開催。

今回のメインは「田起こし」。

来月の田植えに向けて、土を耕します。




まずは土をじっくり観察。

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稲を育てる土のこと、

こんなに近くの足元にある土のこと、

なーんにも知らないのね、俺。

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この土で出来たという土器。

小さな小さな器なのに、

大地とのつながりがものすごーく心に響く。




今回使う道具(鍬)についてもお勉強。

古代も現代も形がほとんど変わってないのね。

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ちょっとしたデザインの差にみられる地方色。

なぜその形なのか、

なぜその長さなのか、

道具の形ってやっぱり深く考えられている。




いざ田起こし開始!

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今回は博物館から借りてきた

文化財レベルの道具も使わせていただく。

贅沢な体験。


 

鉄の鍬で耕してみる。

ザックザックと掘り進める。

ちょっとぐらい固いところもザックザック。

無心で作業。

ザックザック。




木の鍬でも耕してみる。

ザッザッ。

木なので思った以上に浅い部分しか耕せない。

耕すと言ってよいのか疑問に思うほどの深さ。

でも、昔の土はもっとやわらかかんたんじゃないか?

ザッザッと掘るとたまに石にあたる。

手を止め石をどかす。

このひと手間も心の余裕につながっている?

土と向き合いながらザッザッと耕す。

おしゃべりしながらザッザッと耕す。



やってみないとわからなかった。

やってみた人じゃないと絶対わからないと思う。

木と鉄でこんなに違うのかと驚いた。

鉄の作業効率の良さにではない。



鉄は強い。

だから土を支配してしまう。

やさしさもない。

土と向き合おうともしなくなる。

ただただ無心で耕してしまう。




木の鍬で耕すと自然と土と向き合える。

自然と会話が生まれてくる。

心が優しく穏やかになる。

身体の動きも全く違う。

鉄には鉄のよさがある。

でも・・・。

ナンダコレハ?




以前道具のレクチャーしてくれた雨宮さんの言葉が

今ならものすごーくよくわかる。

http://artoro.jp/2018_01_21_series4/


木と鉄の道具の差、

これを体感できたことは、

なにかものすごーく大事なことを学んだような気がする。


土の中から出てきたドジョウたち。

きっと鉄の鍬は恐怖だっただろうね。
 

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変わったのは道具だけじゃない。

きっと土も変わってしまった。

道具と土、切り離して考えたらいけないんだよね。

みんなみんなつながっている。




知るって大事。

体験するって大事。

心地よい労働ありがとう。

今回もすごーくよい講座となりました。

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次回はいよいよ田植えです。


ARTORO2018 募集!

私が活動を続けているアートロですが、
 
2018度の募集を開始しておりますのでご案内させていただきます。


 
アートロとは、簡単に言ってしまえば、

衣食住のつながりを楽しく学びながら考えてみようという活動。

詳しくはこちら→ http://artoro.jp/archives/


 
今年度は農業体験と講座を組み合わせた連続講座となっております。

また、秋には身近な素材を使った簡単な住まいづくりにも挑戦いたします。

興味がありましたら、是非ご参加ください。



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【2018年度連続講座 “ひとつ屋根に暮らす” 】


◇説明会&種もみ配布

日 時  2018年4月22日(日)
    
 13時~16時(受付開始 12時半より)

場 所  登呂博物館 1階ホール

内 容  今年度の予定について

     苗の育て方について

     種もみ配布

講 師  宮田祐二さん(静岡県の農業技術研究者)

主 催  登呂会議


 

米、タネだった!ってわかってた??

田植え体験は全国各地よくあるけれど、

苗を種もみから自分で育てるところからやります。


 

アートロでは今まで土で土器をつくり、

稲を育て、

米を食べて、

稲藁で道具を作って来たけれど、

2018年度はさらに、

人間が発明した最たる道具、住まいの屋根に

この稲藁を使おうという計画なのです。

今年度のスケジュールはこんな感じ。


 

【2018年度スケジュール】

4月22日 「米、タネだった!」
     
講師:宮田祐二さん(静岡県の農業技術研究者)

5月20日 「土を耕す。〜ところで、土ってなんだ?」

     講師:宮田祐二さん

6月10日 「土で、稲を育てる。」

9月9日 「鳥の巣から学ぶ
     
〜足元にある素材から居住空間をつくる〜」
     
講師:鈴木まもるさん(鳥の巣研究家、画家、絵本作家)

10月中旬 収穫(台風などの影響により変更あり)
1
1月24・25日 「身体で測る、足元の素材で住まいを作る」

     講師:相楽育弥さん(かやぶき職人)

2月 「土で育った米を、土器で煮炊きして食べる。〜収穫祭〜」


 

登呂は弥生ですけど、

定住する前の縄文の住まいを作ってみます。

かやぶき職人の相良さんと2日かけて、

移動民のように家を作ります。

藁の結束の仕方も学べちゃいます。


 

いやいや、霊長類ヒト科の住まいの前に

鳥の巣からも学びます。

どう見ても人間が真似したとしか思えない鳥の巣。

でも、これ住まいじゃないって知ってました?


 

鳥の巣も、人の住まいも、

どちらにも言えることは、たぶん安心と安全。

自ら作って、その中で過ごしたら、

何をもって私たちは住まいとするのか?

そんなことがわかるかもしれません。


 

自分たちで言うのもなんですが、

かなりおもしろい連続講座になっていると思います。


 

【申込について】

・4/22の説明会のあと、参加申込していただいてもOK

 もちろん今すぐ申込していただいてもOK

・年間参加費は、21,000円(1家族)

 もちろん1人での参加もOK

 募集定員は20家族
 
定員に達し次第、締め切らせていただきます。

・お申込はメールにてお願いいたします。

 登呂会議 contact@artoro.jp

・メールには下記を記載してください。

 名前、住所、電話番号、メールアドレス
 
一緒に参加されるご家族がいればその方の名前、続柄

※年間通しての連続講座の申込となります


 

こちらのサイトから簡単に申込できます

http://artoro.jp/2018_orientation/



 

どうぞよろしくお願いします。


ARTORO 「修繕しながら、暮らす」

今期最後のARTOROの告知させていただきます。

 

3月11日(日)13:00~16:00 登呂博物館にて、

「修繕しながら、暮らす」と題して、

かやぶき職人の相良育弥さんに登壇してもらいます。

(登壇と言ってもARTOROは常に座談会形式のフリースタイル。)




相良さんは神戸を拠点に

世界をまたにかけて活躍している若手の職人さん。

宮沢賢治に憧れて大地に生きる百姓を志し、

だけど減反で米がつくれず「三姓」止まりになるものの、

そんな時出会った茅葺の親方に

「茅葺屋根は百姓の業で出来ている!」

との言葉を受けて弟子入りして、

今では屋根はもちろん、インテリアも茅で手掛けてしまう、

とても魅力的な男も惚れるかっこいい職人さんなのです。

http://www.kusa-kanmuri.jp/


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先日、相良さんに会いに淡河町まで行って、

茅場(茅は田んぼの畔で育てていたりします)や茅葺の住宅、

葺替え中の現場などを見学させていただきました。


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相良さんが拠点としている神戸市淡河町には、

今でもたーくさんの茅葺き住宅があって、

町の景観もどこか品のあるすごーく魅力的な場所。

移住希望者が300人待ちというのもうなずけます。




そのとき彼はこんなこと言ってました。

「茅葺職人の仕事は、

組む、編む、縛る、縫う、纏める、結ぶ、緩める・・・、

糸編がつく仕事ばかりで、

過去から未来、住むと生きるを

ぐるっとつないでいるんです。」




「無理に高価な材料を使わなくたって、

身近な材料でやればいいんですよ。

稲藁だってススキだっていい。

手入れさえすればいつまでも長持ちする。

昔からそうやってきたんだから。

これだって戦後に麦を育てるようになったから、

一番身近にあった麦を使っているだけなんです。」

と言って見せてもらった屋根には麦の穂が!


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相良さんはこうも言ってました。

「ただ伝統を守る仕事をするのではなく、

これからの時代に合った、

必要とされるような茅葺の在り方を模索していきたい。」

茅葺という素晴らしい伝統と思想を

ただ残そうとするのではなく、

そこに人間が忘れかけた大事なものを強く感じているからこそ、

これから先の時代に目を向けた前向きな姿勢で、

新しい発想で仕事に取り組もうとする姿に、

私、とても共感しちゃいました。




3月11日は今の自分たちに必要な

おもしろい話がたくさん聞けると思います。

茅葺の構法の話だけでなく、

伝統の活かし方や、

循環する暮らし、

自然素材の魅力について等々・・・。




今回の講座がARTORO今期最後の講座。

時代は進みます。

進むからこそ、

これからの在るべき住まいについて、

是非是非一緒に考えてみたいのです。

かなり貴重な機会だと思いますよー。

この機会、逃すのはもったいないですよー。



今回だけ参加したいという方も大歓迎ですよ。

申込はこちらからお願いします↓

http://artoro.jp/artoro2017/


学生さんは半額でOKですよ。

お子さん同伴もOK。

(実際に小学生の男の子も参加してくれてます)

みんなで楽しみを分かち合いましょー。

お待ちしていまーす。

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佐藤浩司先生

明日の国立民族博物館 佐藤浩司先生の講座に向け、

先日、先生のご自宅に伺いました。
 
先生の話を聞いていると、

人、環境、条件によって

『住まい』がこれほど違うのかと驚かされます。

自分の思っている『住まい』とは

とてもとてもとても狭いものだと思わされます。

普段設計という仕事をしていて、

『住まい』についてたくさん考えているのに、

まだまだ知らないこと、気づかないことがたくさんあるんだなと・・・。

そこにはきっと新しい可能性があると思います。

2018-02-10-19-57-29.jpgのサムネイル画像

写真は佐藤先生のご自宅をお伺いした時、

思いがけず用意してくださった昼食のカレー。


大変おいしゅうございました!


佐藤先生の講演に参加したい方はARTOROのサイトから申込お願いします。


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